ジャンクな脳と記憶

レトロなゲームや読書の話題、ゆるりと。

バラバラになったピースはやがて一つに、夏を殺す少女。 

 

 

あらすじ

 

ウィーンの弁護士エヴァリーンは、マンホールで溺死した小児科医ルドルフの事件を調査していた。

また、ライプツィヒの刑事警察のヴァルターは、病院で不審死したナターシャの事件を調べていた。

一見関係ない事件に見えるが、その影に現れる謎の少女、そして白髪の男。事件を追う内に過去に起きた謎の少年少女不明事件に紐付いていく・・・。

 

 

登場人物

 

エヴァリーン:ウィーンの弁護士。本編の実質主人公、過去の事件でのトラウマがある。

パトリック:皮肉好きの私立探偵。以前はエヴァリーンの同僚であった。

クラーガー:エヴァリーンの弁護士事務所の経営者、パトリックの父親・

ホロベック:クラーガーの共同経営者。エヴァリーンの先輩。

 

ヴァルター:刑事。もう一つの事件を追うもう一人の主人公。

ヤスミーン:ヴァルターの娘。

フックス:ヴァルターの上司。

ナターシャ:病院で死んだ少女。

ゾーニャ:ナターシャの心理療法士。

コーラー:検察官、ゾーニャの元夫。

 

ルドルフ:マンホールに落ちて死んだ小児科医。

ハインツ:死んだミュンヘンの市会議員。

エドワード:ホンスキン:フリートベルク号の船主。

グレータ:ホンスキン:その娘。

パウル:シュモレ:フリートベルク号の船長。

 

さて、ドイツのミステリーは良質なものが多いが、以前エントリーした「深い疵」も中々の秀作であったが今回の「夏を殺す少女」のほうがよりサスペンス的な演出ではなかろうか。

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物語はウィーンから始まる。弁護士のエヴァリーンは金にならない仕事を咎められていたが、知り合いの頼みでその金にならない仕事を引き受ける。

 

小児科医が工事現場のテープを超えて、マンホールに落ちて死んだ案件で、その家族が建設会社に対して訴訟を起こしていた。エヴァリーンはその建設会社の社長と知り合いで、その事件から建設会社の落ち度が無い事を証明しようとしていた。

事件を調べる内に、小児科医ルドルフにはどうやら秘密があるようで、足取りを追う内に、防犯カメラに写った謎の少女を発見する。

そして、エアバックが作動して事故死した市会議員の事件にも、その少女が暗躍している事を発見する。

そんな中、同僚のホロベックが謎の死を遂げ、ホロベックはその市会議員の案件を担当していたのであった。

同時期、刑事のヴァルターは病院でナターシャという少女が死んだのを調べていた。ヴァルターの調査で、ナターシャは他殺と分かったが、その調査をしていくうちに、謎の白髪の男が関係している事を突き止めてる。そして、同様の事件が何件も起きていることを突き止めるが、そんな中ヴァルターはその事件から担当を外されてしまう。

自分の信念を貫くため、ヴァルターは休暇をとって事件を追うことにする。

そして事件は13年前のフリートベルク号につながっている事となる・・・。

 

てな感じで、過去に起きた因果によって何かが起きている、というミステリーのお約束を踏まえた上で、エヴァリーンの過去、ヴァルターの家族などを巻き込み、怒涛の展開で最後まで飽きさせない作りになっている。

名前がドイツ人やオーストリア人なので、わかりにくいが、登場人物はすっきり整理されているので、比較的読みやすいのではないだろうか。

エヴァリーンの過去の件は、尺がたらないためであろうか希薄で、必要であったか疑問だが、だからといってこの作品が名作である事に違いはない。

また、ヴァルターの動機が、「娘と被害者」を重ねたのと「自分の仕事に対する情熱の不完全さ」で説明出来ない部分があるが、(それだけの理由で休暇をとって調べようとは中々思わないだろう)そこは展開的にしかたがないところであろう。

 

さて、著者のアンドレアス・グルーパーはSF作家であり、短編小説家でもあるらしい、いくつか賞を受賞しており、作家としての才能はお墨付きであるらしい、アイデアが豊富であらゆるジャンルの物語を書いているが、ミステリーでもその才能はこの作品でお墨付きというわけだ。

私は喘息持ちで偏屈の刑事ヴァルターが気に入ったので、ぜひヴァルターのスピンオフの作品を出してもらいたいと思っている。