ジャンクな脳と記憶

本を通じて人生の幸福を考えています。

記憶は巧みに嘘をつく、記憶探偵と鍵の掛かった少女。

我々の脳みそは実によく出来ていて、自分の精神が破綻しないようにうまいこと書き換えを行っていることは知られている。それが、過去がいつでもいい思い出に包まれている事からも明らかだ。同時に強烈な出来事が起こると、いつまでもフラッシュバックのように何度も繰り返し、その時の状況が(鮮明に)思い出される事もあるだろう。

 

さて、今日は「美しいものには棘がある」的なストーリーが魅惑的な「記憶探偵と鍵の掛かった少女」をレビューする。

記憶の中に入り込むことが出来る「記憶探偵」である主人公であるジョンは、浴室で自殺した妻のアナに対する罪悪感に苛まれていた。

次第にそれは、彼の仕事にも影響して来て、やがて休職を余儀なくされる事となる。

 

「記憶探偵」はどうやら、人の記憶の中に登場人物として入り込み、その出来事を「目撃」し、それの真贋を確認する仕事のようであり、その内容は(記憶に実際に入り込む以外は)心理カウンセラーに近いものがあるようだ。

 

ジョンは他人の記憶に入るこむ過程で、自分の記憶が流れ込み(それは決まって水に関わる出来事なのである、それは妻が自殺したのが浴槽で有る事に起因している)

 

仕事が困難と判断されたジョンは、その実力を発揮できないまま失意の休職を受け入れる。だが、海沿いの妻と過ごした家を維持する為に金が必要になり、再び「記憶探偵」として仕事を受けようと試みる。

 

上司に進められた仕事は奇妙なものであった。

「アナという16歳の少女に食事をさせる事」

アナは富豪の娘で何か問題を抱えているようだ。そして、奇しくも「アナ」は死んだ妻と同名であった。

 

てな導入部分だが、

ここでのポイントは

記憶は操作できる。

おっさんと少女は恋に落ちない、ということだ。

 

関係ないが、ある結婚相談所のアドバイザーが結婚できない男性は、とにかく若い子が好きで、同世代は全く眼中に無いそうだ。そうして、映画であるような、おっさん+ヒロインの若い女という構図を夢に描くのだ。

確かにこの「記憶探偵と鍵のかかった少女」に出てくるアナは、大変美しい女性である。主人公のジョンも禿げているがイケメンであるが、しょせんおっさんである。そんな美しい少女に手でも握られたら、「あの子には俺しか居ないんだ・・・」と暴走するジョンの悲壮感も同情できる部分なのかもしれない。

 

この「記憶探偵と鍵の掛かった少女」はサスペンスの佳作であるが、低予算の割には楽しめるスリラーである。

とりあえず、ネーミングセンスが頂けない事を除けばだが、