ジャンクな脳と記憶

本を通じて人生の幸福を考えています。

ホラーなのにちゃんとミステリー「ぼぎわんが来る」「ずうのめ人形」「ししりばの家」

今回は澤村伊智の「比嘉姉妹」シリーズの三部作「ぼぎわんが来る」「ずうのめ人形」「ししりばの家」をおすすめする。

これらはジャンル的には「ホラー」に分類されるが、読んでみると分かるが「ミステリー」的な要素が含まれている良作であり、読み始めると一気に読破してしまうほどの面白さである。

単純な、呪いとかではなく、その得体のしれないもの+人間の悲しい性みたいなのを融合させ、見事に昇華させた作者にはただただ脱帽するばかりである。

 

なによりもタイトルの奇抜さ「ずうのめ」「ぼぎわん」「ししりば」この名前の由来はちゃんと本の中に言及があり、ああ、なるほどと思えるものである。

 

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん"の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!

あらすじより

 

ぼぎわんはが来るは、ぼぎわんの得体のしれない感じが不気味で、三津田信三の「首なしの如く祟るもの」のような本当に居そうなリアルさがとても面白いが、何よりもテーマが昔の日本の女性軽視が根幹にあるのが、この作品を上品に変えている。

 

このぼぎわんで既に、比嘉姉妹の物語は始まるのだが、次回作「ずうのめ人形」は時間軸が過去と現代を行き来した、よりミステリー的な展開が面白い。ずうのめ人形のチート並みの強さも中々の恐ろしさだ。

 

不審死を遂げたライターが遺した謎の原稿。オカルト雑誌で働く藤間は後輩の岩田からそれを託され、作中の都市伝説「ずうのめ人形」に心惹かれていく。そんな中「早く原稿を読み終えてくれ」と催促してきた岩田が、変死体となって発見される。その直後から、藤間の周辺に現れるようになった喪服の人形。一連の事件と原稿との関連を疑った藤間は、先輩ライターの野崎と彼の婚約者である霊能者・比嘉真琴に助けを求めるが―!?

あらすじより

 

 三作目の「ししりばの家」は他二作と比べても完成度は高いが、ホラー色は薄目で、スケールは大きいが、まとまった作品だ。比嘉真琴の姉、比嘉琴子の過去が描かれた作品で、比嘉真琴は今回は出てこない。不気味さは他二作のほうが上だが、やや普通の作品になったと感じる。

 

夫の転勤に伴う東京生活に馴染めずにいた笹倉果歩は、ある日幼馴染の平岩敏明と再会する。彼の家に招かれ平岩の妻や祖母と交流をしていく中で果歩の心は癒されていくが、平岩家にはおかしなことがあった。さあああという不快な音、部屋の隅に散る不気味な砂。怪異の存在を訴える果歩に対して、平岩は異常はないと断言する。一方、平岩家を監視する一人の男。彼はあの家に関わったせいで、砂が「ザリザリ」といいながら脳を侵食する感覚に悩まされていた。果たして本当に、平岩家に怪異は存在するのか――エンタメ界の鬼才が放つ、注目のノンストップホラー!

あらすじより

 

というわけで、妙なネーミングもさることながら、一気読みするほど面白い比嘉姉妹の「ぼぎわん」「ずうのめ」「ししりば」ぜひホラーを読まない人にこそ読んでいただきたい次第です。

 

*ぼぎわんは映画化するそうですが、タイトルは「来る」だそうです。映像化は難しいでしょうがぜひいい作品に仕上げてほしいです。