ジャンクな脳と記憶

本を通じて人生の幸福を考えています。

真実の方が怖い。殺人犯はそこにいる。

いわゆる推理モノは結構好きで、海外ものから邦題までけっこう読んでいるが、中にはホラータッチなもの(島田荘司など)は不気味さが面白いと感じるのだが、現実社会の起きた事件の不可解さは、比べ物がならないほど暗渠とした気分にさせてくれる。

 

今回は清水潔著の「殺人犯はそこにいる」副題として「隠蔽された北関東幼女誘拐殺人事件」となっている。

これは日本テレビの報道局の清水潔氏が取材した記録なのだが、この内容が凄まじい。清水氏の執念とも言える取材力も圧巻だが、日本の司法に深く切り込んだそのストーリーはひょっとしてすごい事なんじゃない(すごい事なのだ)と感心するばかりだ。

 

この本は1984年から96年に起きた連続幼女誘拐事件の詳細が描かれているのだが、なんといってもその一つの事件で犯人とされていた男性を、刑が確定したのにも関わらず清水氏が集めた証拠で再審まで持って行き、見事冤罪事件として無実を証明したところがまず凄い。

日本で刑が確定して、再審要求したところでほとんどが棄却されるだろうし、検察がそれこそメンツにかけて潰してくるにきまっているからだ。

そこを清水氏は勝ち取り、本当の犯人に辿り着くのだが、その過程がひどく生生しい。

これが小説なら、被害者の遺族から話の件は割愛されてもおかしくないが、実際は遺族から話を聞くのは至難の業という事が分かる。

そして不幸にも事件に巻き込まれた遺族は、その事を忘れようとしている心と解決して欲しい心が天秤になっている事に気付かされる。

引き込まれる内容だが、心が重くなる瞬間でもある。

また、警察の隠蔽は恐ろしいの一言である。

昔ホリエモンが「検察は逮捕したい人間を選んで逮捕している」的な事を言っていたが、この本を読むと都合の良い証拠だけが選ばれており、その政治的な圧力で一度犯人に仕立てられたら、逃れるのは至難の業と言える事がわかる。

それは交通違反で捕まった時のおまわりさんの態度を見ても分かる。どう見ても選んで捕まえているようにしか見えない!。

 

話が逸脱したが、この清水氏の本は「桶川ストーカー事件」のルポもあり、そちらもかなり怖い。そして、清水氏の本を読むとまだこの国にも真面目にジャーナリストしている人がいると分かって少し安堵する気持ちになれる。