ジャンクな脳と記憶

本を通じて人生の幸福を考えています。

誇りを忘れるべからず。インサイド・マン

いきなりアップの男の顔。

男は無精髭を生やして、心なしかやつれているようにも見える。

深く窪んだ眼窩は黒く疲れた色を醸し出し、顔色はすこぶる悪い。

彼はカメラに向かって、今の自分の状態を吐露する。

てな具合に始まる映画は、ハリウッド映画にある派手なアクションとは無縁の大人が楽しめる内容である。

 

 

ストーリーはNYにある信託銀行に銀行強盗犯が押し入る。そこに人質をとり立てこもる強盗犯。NYPDは刑事二人を交渉人として派遣するが、強盗犯は奇妙にも人質全員に同じ格好をさせて時間を稼いでいる。

交渉にあたったフレッシャー刑事は強盗犯の策略に嵌まり、かれらの思惑通り事は進んでいく、そして警官が突入するとそこには・・・。

 

 

銀行強盗ものである本作は、巧妙に練られた計画に感嘆するのは当然だが、リーダー格の男のその信念に本作の醍醐味があるといえる。

金や復讐というのがお約束の動機に対して、それ以外の洒落た結末が最後に訪れるのだが、いつの間にか悪役であるクライブ・オーウェンを思わず応援してしまう事間違いなしです。

さてデンゼル・ワシントン扮する交渉人があまりに影が薄いですが、いわゆる切れ者の刑事役で上映時間では足りなかったのか、人物像がやや不明瞭だったので、ここは悪役のクライブの方が感情移入が出来るのではないだろうか?

さて、この映画何気に過去の亡霊のような黒幕が守るべき秘密が、銀行強盗犯の真の目的であったのだが、この辺りの話がややスケールが小さく、そしてオーウェンとどのように絡んでくるのか説明が無いのが残念です。

ただ、最後のシーンでクライブ・オーウェンが言うセリフ。

 

「誇りこそ、最高に価値を持つものだ」

 

このセリフこそが、この映画の全てと言っても過言ではないし、

全ての真実ではないだろうか?